めまぐるしい時代を生きる現代人は、絶えず何かを考えていて、脳を休める機会がほとんどありません。さらに、幼い頃から「理想の人生像」を周囲や社会から植えつけられ、多くの人々は妄信的にそのゴールに向かって生き急いでいます。この弱肉強食の社会では、どれだけマルチタスクに仕事をこなし、どれだけ速くゴールにたどり着けるかがすべてです。勝敗がそのままその人の価値となり、「成功」=「勝者の勲章」だと考えられています。あなたもこんな構図に生きにくさを感じたことがあるのではないでしょうか。勝ち負けに囚われるあまり自分のペースを見失ってしまうと、「自分はダメな人間だ」「自分の努力が全然足りない」といった自己批判的な感情を抱いてしまうことも少なくありません。競争や比較のストレスに晒され、私たちの心は常に臨戦態勢でいることを求められるのです。これでは気の休まる暇がないのも当然です。だからこそ、私たちは今まで以上に心のケアについて考える必要があります。マインドフルネスや瞑想をセルフケアに取り入れてみましょう。
人間がものを覚える・考えるなどの高度な働きができるのは、「ニューロン」と呼ばれる神経細胞があるからです。ニューロンは互いにつながり、複雑なニューロンネットワークを作っています。ある一定の行動や対応が繰り返されると、このニューロンネットワークはより強くなり、機能が高まっていきます。反復運動を繰り返すにつれて、脳の使えるネットワークが増えていくということです。これはポジティブな習慣であればポジティブな変化に、ネガティブな習慣であればネガティブな変化として現れます。例えば、日頃からストレスレベルが高く、プレッシャーに晒されている人の脳では、健全な意思決定を行う部分の働きが弱まり、うまく機能しなくなります。このような条件下では、無視できるようなごく小さな出来事に対しても過敏になりすぎてしまう反応を引き起こす、別の脳領域が発達することが分かっています。
ある臨床実験では、被験者に1日20分間、約8週間の瞑想を実践させたところ、それ以前に記憶されたニューロンネットワークを書き換えるという結果が得られました。マインドフルネスが習慣化されるにつれて、それに関連する新しいニューロンネットワークはさらに強くなっていったのです。脳の中では、意思決定や集中力、記憶力を司る大脳新皮質の一部が厚くなり、一方で肥大することによって不安障害や破壊的な行動を引き起こすといわれる扁桃体は小さくなるという変化も見られました。
ここでは、瞑想が私たちに与える効果の一部をご紹介します。
定期的な瞑想の実践は、どんな窮地に立たされていても冷静かつ落ち着いて対処する方法を教えてくれます。自分自身の感情とつながり、呼吸の中に安らぎや安心を見つけることができるので、しっかりと地に足をつけた状態で臨機応変な対応をすることができるのです。脳を構造から変え、根元から体質を改善していく究極のトレーニングといえるでしょう。
瞑想を行う際には、日頃見落としてしまっているような小さな「気づき」を得ることが大切です。次のような質問を自分自身に問いかけながら、実践してみましょう。
毎日の瞑想は、凝りかたまっていた心や思考回路を少しずつ溶きほぐしてくれます。あなたの考え方はより柔軟に、そして健康的なものへと変化していくでしょう。人生に対する見方が変わり、今この瞬間を意識する能力が高まることで、私たちの脳はさらなる高みへと進化を遂げます。まずは少しずつで構いません。瞑想を続け、心と体に休息を与えましょう。きっとあなたも、変わっていく自分自身に驚くはずですよ!