「じっと座ることができません」「全然集中できないんです」「正しく瞑想できません」こんな相談を受けることがあります。まず覚えておいていただきたいのは、マインドフルネス瞑想には「〜できない」という概念は存在しないということです。”気づき”を得る方法は人それぞれ、そこで得る体験も人それぞれです。他の人と比べる必要もありませんし、そもそも「こうでなければならない」という正解すらないのです。
瞑想をするときに気をつけるポイントは、「雑念をなくす」のではなく、「雑念に入り込まない」こと。最初は難しく感じるかもしれませんが、正しい方法で練習を続ければ、「ただ目の前のことに集中する」という感覚がだんだん掴めるようになっていきます。瞑想を通して、意識的に今ある呼吸や体の感覚を見つめると、いつもは当たり前で見落としてしまいがちな『ありのままの自分』の存在が見えてきます。日々の心配事やストレスから自分を解放することで、穏やかで落ち着いた空間を作り出すことができます。
まずは毎日10分間、自分のための時間を作ってみましょう。鼻から息を気持ちよく吸って、ゆっくりと吐きます。「今ここ」にいる自分を感じながら、全身をリラックスしましょう。心と体が整ってきたら、瞑想を始めてください。呼吸と体の感覚に意識を向けて、次々と浮かぶ雑念を観察します。練習を重ねていくうちに、自然とこの時間は長くなっていきます。
「心を無にしないといけませんか?」「頭を空っぽにしないとダメですよね?」こんな質問をいただきますが、どちらも答えはNoです。はっきりと申し上げましょう。そもそも瞑想中に思考を止めることのできる人などいません。マインドフルネスの本質は、実は「思考を止める」とは真逆のことなのです。大切なのは、浮かんでくる思考に気づき、自分をよく観察し、思考に入り込まずに見送ることです。私たちはいつも何かを考えています。これは自然なことです。それを止めようとするのではなく、考えがあちこちに飛ばないように、まずはその考えの存在を認識することが大切です。瞑想中にある考えにとらわれ、意識がそこへ向いてしまったら、「あ、今別のことを考えてる?」と自分に問いかけ、意識を「今ここ」に戻しましょう。別のことを考えないようにするのではなく、別のことを考えていることに気づき、意識を戻す。この「逸れたら戻す」という反復運動が、一番効果的なトレーニングとなるのです。
マインドフルネス瞑想はあなたに小さな「気づき」の機会を与えてくれます。今ある呼吸や感覚、感情に気づくこと。これが自分の状態を知り、自分を正しく理解する第一歩となります。瞑想の時間を毎日少しずつ取ることで、あなたはもっと多くの「気づき」を日々の中に見出すことができるようになっていきます。
目を閉じて瞑想をしたとき、どんな考えが浮かんできましたか?おそらくほとんどが、まだ見ぬ未来や終わった過去に関することだったのではないでしょうか?私たちは今を生きているのにも関わらず、とにかく心が「今ここ」にいないのです。
人は過去の経験から学び、将来の計画を立てることで進化してきました。そしてこれは今も全く変わっていません。私たちはいつも前を向いていて、目の前に立ちはだかる壁を乗り越えることに生きがいを見出します。そういう意味では、私たちは必然的に「将来の計画を立てる」生き物なのです。何より大事なポイントは、未来にばかり気を取られて、今をおろそかにしないこと。これに尽きます。仕事や家族、健康やお金、キャリア…確かにどれも大切ですが、どれにもとらわれてはいけません。「今ここ」からどんどん離れてしまうからです。まだ見ぬ先の景色に心を奪われ、今目の前で起こっている大切な瞬間を逃してしまわぬように。そして「物事はこうあるべき」と決めつける心にとらわれ、その裏に隠れた本当の意味を見落としてしまわぬように。いつも「今ここにいる私」の存在を思い出しましょう。