近年、ビジネス業界で注目を集めている「マインドフルネス」。
世界的にGoogleやApple、Intelといった会社が、社員研修でマインドフルネスをと入れていることで話題となっています。
情報化の加速する現在、効率や生産性の向上が求められる中で、社員のモチベーションアップのために「マインドフルネス」が有効であるということが実証され、社員研修で取り入れる会社が増えてきました。
では一体、マインドフルネスとビジネスにはどのような関係があるのか、マインドフルネスを社員研修に取り入れるメリットについてお話します。
マインドフルネスは「今この瞬間」を感じること。
意識をその一点に集中させることで、気持ちの切り替えがスムーズに行えたり、現状で起きている物事に対して的確な判断を下すことができます。
現在、私たちが置かれている環境は、情報化・スピード化を優先に考え効率よく物事をこなしていかなければなりません。
例えば同時にいくつものタスクをこなさなければならなかったり、限られた時間の中でより多くの物事を行わなければならなかったり。
この多くの事柄をこなしていくには、一つ一つの物事に対して集中し、忍耐力と精神力を保ちながらスムーズに遂行する高いパフォーマンス力を必要とされます。
しっかりと「今」の状態を認識し、自分の心や身体の状態を知っていく「マインドフルネス」は、過去や未来、あるいいは周囲の情報に引きずられることなく正しい判断と実行力を身に着ける方法として大変効果的と言えるでしょう。
1970年代に生まれたマインドフルネスは、元々、仏教の瞑想修行として生まれました。
心を一点に定め、自分を内観する練習法として実践されていたマインドフルネスですが、
ストレスマネジメントに効果的だとして医療分野に応用され、科学的に立証されたことから、世界的にブームとなりました。
呼吸を通じて「心が何を感じ、身体がどういう状況にあるのか」ということを冷静に認識していくマインドフルネスは、過去の失敗や未来の不安を感じることなく気持ちを安定させることができます。
マインドフルネスの研究は2013年に1万2000人以上のデータを対象にメタ分析がなされ、以下の内容に効果があるといった研究報告がなされました。
マインドフルネスは、「今を大切にする」ということ。
例えば仕事上のトラブルや問題を抱えている時期が続いたとしても、好きな趣味などの没頭している時は悩みも忘れてしまうもの。同じように、仕事の中で余計なことを考えず、「今この瞬間」にうまく注意を戻すことができれば、過去の失敗や未来の不安も浮かばず、大きな成果を手にすることができるのです。
マインドフルネスは様々な精神的ストレスに有効とされていますが、実践を続けると、ビジネスの場でどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的にお話します。
①ストレス軽減とセルフマネジメント能力の向上
ストレスは脳の「扁桃体」という場所と関係しています。
扁桃体は、人間の情動反応の処理と記憶において中枢を担っている場所で、特に不安や恐怖といったネガティブな感情に働き、ストレスホルモンを出す司令塔と言われています。
マインドフルネスは、この扁桃体の働きを緩やかにする効果があり、感情をコントロールできるだけでなく、「幸せホルモン」と言われるセロトニンの分泌を促す効果もあると言われています。
②モチベーション・共感力の向上
記憶力は脳の「島皮質」という場所と関係しています。
島皮質は、幅広い分野を担当しており、社会的感情、道徳的直感、他者の表情への反応などと関係していると言われています。
マインドフルネスを続けることで、島皮質の厚みを増すことができると言われており、他者の気持ちを理解できたり、未来の自分をイメージできるようになることからモチベーションを向上させることができると言われています。
③ワーキングメモリの向上
一次的に情報を脳に記憶させたり処理する能力であるワーキングメモリは、脳の前頭前野という場所が関係しています。
前頭前野は、情報の処理や記憶、アイデアを出したり判断を下す、感情をコントロールするといった、人間にとって重要な働きを担っていると言われる場所です。
マインドフルネスは、この前頭前野を活性化する効果があり、会話や読み書き、記憶力の向上や素早い計算能力を向上させることができると言われています。
④知性の向上
思考力や問題解決能力は、脳の「大脳皮質」という場所が関係しています。
大脳皮質は、物を知覚したり、未来予測をしたり、計算や推理など、いわば「知性」を司る機能と言われています。
マインドフルネスは、年齢と共に小さくなっていく大脳皮質の収縮を抑えることができるといわれています。そのため、老化の防止にも効果的です。
⑤精神疾患の改善
医療の分野では「マインドフルネスストレス低減法」や「マインドフルネス認知療法」を行うことで、うつ病の緩和、身体的・精神的ストレスの軽減に効果を発揮することが実証されています。
マインドフルネスを続けることで、ストレスに強い心と身体を作ることができます。
マインドフルネスは、ビジネスマンにとって有効な効果が実証されていますが、実際に企業に導入した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
マインドフルネスは、ストレス軽減に効果的で、思考力や集中力アップにも効果があることから、個人のパフォーマンスを高めることができるといわれています。ヤフーの社内調査では、マインドフルネスを実施後のプレゼンティーズム(健康問題を抱えつつ仕事をしている状態)が20~40%改善したと報告されています。
感情をコントロールし、客観性や知性を身に着けることができるマインドフルネスは、リーダーに必要な能力であるEQ(感情を上手く管理し、利用する能力)を鍛えることができます。そのため、マインドフルネスを続けることで、リーダーシップを向上させる効果があると言えます。
自分を深く知ることができるマインドフルネスは、レジリエンス(困難な状況や危機的状況から立ち直る力)を向上させることができます。自己認識力が高まることで、自分のネガティブな感情に気づき、原因を追及できるようになります。そのため、ストレスに対して素早く対応できる能力を身に着けることができます。
マインドフルネスを続けることで、自己肯定感が高まると他者への理解や共感力が高まります。過去の記憶により作り上げられた思い込みや、そこからくるそこからくる批評に囚われることなく良好な関係を結ぶことができます。ネガティブな感情を手放すことで、共感力の高い人間関係を形成することができます。チームの士気も上がり、パートナーシップの取れた質の高いチームを形成することができるでしょう。
マインドフルネスは、副交感神経を優位にします。
副交感神経とはリラックスしているときに優位になる神経で、直感やイマジネーションを活発に働かせるには、この副交感神経が優位な時が適しているといわれています。
好きなことに没頭しているときは集中力も高く、時間を忘れて物事に取り組むことができます。そのため、マインドフルネスを続けることで、より質の高いパフォーマンスが期待できます。
マインドフルネスを続けることで、社員の働き方の変革や、QOL(生活の質の向上)を図ることができると言えます。
マインドフルネスの基本は「瞑想」。基本的な瞑想方法をご紹介します。
①呼吸瞑想
②4-8-8呼吸瞑想
③ボディースキャン
目を閉じるのが苦手な人は、目を開けたままでも構いません。その場合はどこか1点に視点を集中しましょう。また、目を閉じる場合は、寝ないように注意してください。
マインドフルネスを身につけるためには、科学的効果や実践の目的を理解することで、効果をより具体的に体感することができます。基本的な理解から始めましょう。
マインドフルネスについての理解を深め、主体的に取り組んでくれるように促します。マインドフルネスを行うメリットや効果、目的について周知してもらいましょう。
マインドフルネスの基礎となる瞑想を行います。心を静かな状態に整えることで、集中力が高まり、研修に対する意識が高まります。
個人ワークを行います。自分の内側にある様々な感情や価値観を整理していきます。湧き上がってきた感情に対して「なぜそのように思うのか」という深い部分の価値観まで探っていきます。
セルフコントロールで呼び起こした自分の価値観と仕事との結びつきについて考えていきます。現在の仕事と、その先の未来に関する関連性を考え、どのように行動するべきかについて考えていきます。これにより、方向性が明確になりモチベーションの向上やパフォーマンス力アップに繋がります。
最後に、個人の価値観や行動指針をチームで共有していきます。これにより、お互いの理解が深まり、チームワークの向上に繋がったり、作業効率の向上を図ります。
このような研修は1回だけではなく、定期的に行うことで目標達成を早めることが出来たり、チームワークの向上を図ることができます。
いかがでしたか?
マインドフルネスは、単なるリラックスのみならず、個人の能力の開発に繋がり、結果的に社会全体の調和や発展をもたらすために効果的と言えます。
しかしマインドフルネスは継続していくことが重要です。
マインドフルネスを社員研修に導入する際は、目的意識を持ち、実践しやすい環境や方法を選択することが大事です。
1人1人の仕事効率の向上やストレスケアとして、マインドフルネスを研修に取り入れてみてはいかがでしょうか。