パートナーと健全な恋愛関係を築くためには、お互いに思っていることをきちんと伝え合うことが大切です。
お互いの気持ちを伝え合うというと、怒りや失望感、悲しみや嫉妬などネガティブな感情を思い浮かべる人が多いかもしれません。そう思ってしまうのは、自分の個人的な境遇や過去の経験が関係しているからです。パートナーとの関係を守るため、また、関係がネガティブな方向に向かうのを恐れて、怒りなどの感情は抑えるべきだと考えてしまいます。さらに、ネガティブな感情を持つこと自体を責めてしまうこともあります。感じてはいけない感情などないということを知り、どんな感情も受け入れること。そして、それを自分のニーズを深く理解するためのヒントとして扱うことで、ネガティブな感情にも客観的に向き合うことができるはずです。
自分の中にある特定の感情パターンを見分けるこのプロセスは、自分の心の中をどのように掘り下げるかという所から始まります。感情をどう捉えるかで、その感情にどう反応するかが決まるのです。例えば、悲しいという感情を、弱さと結びつけてしまえば、悲しみを押し殺したり、無視してしまったりすることもあるでしょう。ネガティブな感情であっても、それを自分の心の状態を教えてくれるものとして受け止めることで、「では、今この感情は私をどんな状態にしているのだろう?」と、感情がもたらす影響に意識が向きます。こうして自然と自分の状態を冷静に観察することのできる、健全な対処スキルが身についていくでしょう。
他の人間関係と比べると、感情をより敏感に感じるのが恋愛関係です。そのため、自分の感情との向き合い方と反応の仕方が、そっくりそのままパートナーとの心のつながりに影響します。自分の心の状態を理解できていれば、感情をもっと自由に、素直に、共有したり表現したりできるのです。
自分の心の状態を知るためには、まずそこにある感情に気づき、明確にすることが必要です。あなた自身に、次のような質問をしてみましょう。
「今心の中にある感情は、パートナーとのどのような問題から芽生えたものですか?」
「それは不安や悲しみ、怒り、それとも失望ですか?」
「あなたは、このような感情を持った時、どのように反応しますか?」
私たちの心は、さまざまな感情を認識するシステムネットワークの拠点です。ネガティブな感情とも付き合いを深め、その火種を明らかにすることで、自分のニーズがより明確になります。これは自分自身のためだけでなく、パートナーと健全な関係を築く上でも大いに役立つでしょう。
ネガティブな感情から逃げず、向き合おうとすることは、自分の感情を冷静に見極め、素直に受け入れるための大事な一歩です。激しい感情をありのまま受け入れることは難しいかもしれませんが、あなた自身と向き合い、体や心の声に耳を傾けるチャンスでもあります。
ストレスは健康的な思考のプロセスに悪影響を与えます。過度なストレスを受けると、私たちは自分自身にも、パートナーとの関係においても「今、この瞬間」に意識を向けることが難しくなります。ぞんざいなコミュニケーションや、結論を急ぐような会話を避け、目の前の物事を大切にする「マインドフル」な行動を心がけてみてください。それだけで、その場の状況を衝突や対立から、好奇心や相互理解へと軌道修正できるでしょう。
深刻な話し合いの場や気まずい会話を切り出す時、もしくは自分のニーズを伝える前などは、一度深呼吸する習慣をつけてみてください。心の中に静かな空間を持つことで、不要なミスコミュニュケーションを防げます。思いやりや好奇心は、リラックスした体でこそ生まれるものです。安定した体と広い心、この二つが揃ったときに、私たちは落ち着いて話をすることができます。穏やかな精神状態で、パートナーの話を聞き、理解しようと心がけるだけで、反射的な言動は避けられます。
恋愛における個人の価値観や信念は、パートナーとの付き合い方にも大きく影響します。自分の抱いている感情を明らかにするためには、まず現在ある二人の関係性を振り返るところから始めてみましょう。健全な恋愛関係を築けている場合、「今はお互いに大変なときだけど、一緒なら乗り越えられる」「お互い理解しあえる」「パートナーは私が言おうとしていることに耳を傾け、理解しようと努力してくれる」「対立しているときでも、お互いの心を傷つけるような話し方をしない」など、支え合う気持ちが常に根底に流れています。これは二人の関係に安心感を持っているサインであり、いかなる時もパートナーを「敵」ではなく、共に解決策を導きだす「チームメイト」としてみているということがわかります。
逆に、「私を理解してくれない」「私の気持ちを無視している」「私に対して文句ばかり言っている」という負の感情が強い場合、パートナーとの関係性に何らかの形でひびが入っているのは明らかです。感情をどう伝えるかは人それぞれ。心を閉ざし、何も言わず、怒りや不満をどんどん蓄積していくタイプの人は自分の周りに壁を作ることで安心感を得ます。一方で、自分の意見を聞いてもらおうと大げさに意思表示をしたり、早口でまくし立てるたりする人もいます。心を閉ざし、動けなくなってしまう人、戦う人、逃げる人。このように私たちの反応は多種多様です。
自分自身に次のような質問をしてみましょう。恋愛関係の中で感情を引き起こす「トリガー」をより深く理解できるはずです。
「この先二度と自分は理解してもらえないだろう、と思うきっかけになった経験はなに?」
「傷つくことを恐れているのはなぜ?」
「どんな行動をされると、心を閉ざしてしまう?」
「怒って声を上げたり、イライラしたりしてしまう原因となる行動はなに?」
「ネガティブな感情を抱えている時、自分はどんな風に振舞っている?」
「パートナーの立場に立って自分を見たとき、どんな人に見える?」
このようなインナーワークを取り入れることで、自分や恋愛関係に必要のない行動パターンが認識できるようになります。これは変化への第一歩となるでしょう。
ネガティブな感情もシェアすることで、パートナーとの信頼関係を深める役割を果たしてくれます。意思疎通が上手くできずにがっかりするということも減っていくでしょう。パートナーとの絆を維持するため、シェアすることはとても大切です。そして、それと同じくらい大事なのは、喜びを共に味わう機会を増やすことです。実際、恋愛は数え切れないほど多くのポジティブな感情を教えてくれます。パートナーと共に過ごす上で「今、この瞬間」に意識が向いていると、自然と安心感と幸福感が増していくでしょう。アファメーションと呼ばれる肯定的な言葉を送りあったり、お互いへ感謝の気持ちを口にしたりすることで、共に「今、この瞬間」を意識し、この先に起こる困難な状況や、衝突を乗り越える絆が生まれます。