今、わが子のためにできること

コロナ禍で子どもの心の健康を守るためのヒントをご紹介し ます。
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今、世界が人類の歴史において前例のない経験をしています。地球規模で起こって
いるこの出来事は、私たち一人ひとりに少なからず影響を及ぼしています。暗く、
後ろ向きな気持ちになる日もあれば、落ち着いていて穏やかな日、前向きな気持ち
の日もあるはずです。私たちの心の中では、絶えず様々な感情が湧き出していると
思います。そんな大人達と同じように、子どもたちも突然の環境変化によってスト
レスを受けています。しかし子どもの場合は大人とは違い、周囲の大人の気持ちに
大きく左右されるものです。この時期をどう受け止め、感じ、理解するのかは、そ
れぞれの親によって変わるという側面を持ち合わせているのです。

親として、どう感じるのか。

親としてしっかりと対処するために大切なこと。それは一度立ち止まって、自分自
身を見つめてみることです。
今のあなたは何を思い、どう感じていますか?
怒りや恐怖、不安、ストレスに飲み込まれていますか?
それとも落ち着いているでしょうか?
何を思っていてもいいです。どんな感情があってもいいです。ありのまま観察し、
感じるままにしてみましょう。もしかしたら、子供達が一日中家にいることで、自

分の時間や空間が取れないと感じているかもしれません。物事が予定通り進まなく
なってイライラしているかもしれません。もしくは、自由がなくて息苦しさを感じ
たり、先の見えない不安によって絶望的な気持ちを味わっているかもしれません。
何を信じたらいいかわからないようなニュースが一日中流れてくるせいでストレス
レベルはかなり高まっているでしょう。あなたの反応や感情は、どれも全て人間な
ら当然のものです。不安なのは皆同じ。でも、子どもは大人以上に不安になり、恐
怖でいっぱいになります。
 
 それは私たちも例外ではありません。どんな大人でも、心の中には子供のままの
自分がいます。子供のあなたも、人知れずこの混乱の中で不安を感じているかもし
れません。まずは、自分の内側の子供の声を聞き、その気持ちの奥にはどんな原因
があるのか探ってみましょう。そして、親が子供をケアするように、なぐさめてあ
げましょう。冷静な大人のあなたと、純粋無垢な子供のようなあなた。今、この2人
にとって、一体何が必要なのでしょう?不安を和らげ、安心感を与えてくれるもの
や、愛されている、一人じゃないと感じさせてくれるものは何ですか?大切な人を
抱きしめること、友人と電話で話すこと、絵や音楽で気持ちを表現すること。瞑想
を通して自分と向き合うこと。ぐっすり眠ること。美味しいものを食べること。信
頼できる情報を集めたり、読んだりすること。これ以外にも様々なことが挙げられ
るはずです。まず自分自身を落ち着かせて、自分自身が必要としていることをしな
ければ、実際に我が子をケアしたり、あなたの内側にぽっかり空いてしまった穴を
埋めることはできません。特にこの不安定な時期には、塞がったと思った穴もすぐ
に修復が必要になってしまいます。こんな時だからこそ、自分自身を知り、正しく
理解することが大切です。
今あなたの周りに、いざという時SOSを出せる人はいますか?頼れる場所や人はいま
すか?
思い出してみてください。以前のあなたはどうやって困難を乗り越えたでしょうか
?何があなたを助けてくれましたか?
安全な空間で、守られているあなたを想像してみてください。それはどんな場所で
すか?

子供に正しく伝える

今世界で起こっていることを我が子に説明する上で、まずは親として自分を内観す
ることが大切です。子供達は話を聞いているとき、その内容よりも、伝え方に意識
を向けています。子供は親の声の調子や表情、ボディランゲージから、親の感情を
上手に読み取り、その感情は自然と子供にも伝染するのです。大人が過剰に不安に
なって「どうしよう、どうしよう」と取り乱していれば、子供も同じように不安に
なります。逆に、大人がどっしり構えていれば、子どもも安心して生活することが
できます。ですから、何よりもこの状況をあなた自身がどう解釈しているのかが、
非常に重要なのです。あなたの頭の中でどんな声が響いていますか?「また悪いこ
とが起こった。もうお終いだ。どこにも安全な場所なんてない!」こんな声でしょ
うか。それとも、「人生は山あり谷あり。今は大変な時期だけど、きっと乗り越え

られる。」こんな声でしょうか。あなたの頭の中の声は、そっくりそのままあなた
の子供にも伝わるのです。 
子供とお話しする前に、まずは物事のマイナス面ばかりが気になってしまう自分の
癖を見直してみましょう。大変なこともあるけれど、その一方で今回の出来事が教
えてくれた教訓はありませんか?こうなるまで見落としていた大切なものに気づく
ことはありませんでしたか?プラス面に目を向けてみると、頭の中の声もだんだん
ポジティブなものに姿を変えていきます。例えば、今の時期は焦らず、一歩下がっ
て人生を見直すチャンスだと捉えることができます。忙しい日々の中で、心身を酷
使してきたのなら、ゆっくり休息を取るチャンスだと考えることもできます。我が
子に状況を説明する前に、あなた自身が落ち着いて、この状況を自分の中で昇華す
ることが重要です。パニックになっていると感じたら、少し立ち止まって、自分に
問いかけてみてください。
自分の人生が思い通りにいかないと、不安になったりイライラしたりしますか?
いつも完璧を求め、何もかもコントロールしようとしていますか?
なぜそうしなければいけないと感じているのでしょう?
世の中には、自分の力でコントロールできないこともあるという事実を、受け入れ
られないのはなぜでしょうか?
人生は川のように流れ、止まることを知りません。常に移り変わる、不安定なもの
とも言えるでしょう。もしあなたがこの不安定さを受け入れられず、そこに悲しみ
や不安の原因があるのなら、今こそ人生の見方を変え、忍耐力を探るチャンスかも
しれません。
冷静な心を取り戻せたら、ここで我が子とお話しする時間を取りましょう。伝える
上で気をつけるポイントは、子供の年齢に合わせて、わかりやすく、落ち着いた話
し方で説明することです。子供がまだ小さい場合は、ストーリーにしたり、絵に描
いたりして説明してみましょう。
「このウイルスの親戚は風邪やインフルエンザで、体内に入ると咳をしたり高熱が
出たりする。私たちはまだあまりその子のことをよく知らないから、お医者さんた
ちはお薬を作ろうと頑張っているんだ。体の中にも、私たちをこのウイルスから守
ろうと戦ってくれるスーパーマンがいるんだよ。」
こんな風に教えるのも良いでしょう。また、手を洗ったり、くしゃみを腕で受けた
り、しばらく家にいることで、自分の身を守ることができると説明することもでき
ます。「一緒にいるよ。あなたは健康で、安全なんだよ。」と子供に言って聞かせ
ることがとても大切です。お母さんやお父さんが、自分の健康を一番に考えてくれ
ている。それを守るために、家族が一緒に頑張っている。この事実が何よりも子供
達を安心させるのです。

感情を出せる場所を作る

子供に話したあとは、彼らが考えていることや感じていることを表現できる場を作
ってあげましょう。そして、どんな気持ちでも、ありのまま受け止めてあげてくだ
さい。学校もお休みになって、お友達と外で遊ぶこともできない。そんな状況の中

で、ネガティブな情報に晒され続ければ、様々なことが子供の頭に浮かんでくるで
しょう。
「どんなふうに感じる?」「その気持ちは体のどこにある感じがする?」「どんな
色をしてるかな?」「何をしているときに、一番ホッとする?」こんな風に子供の
気持ちや思いを聞きながら、それをストーリーやゲームにしてみましょう。短い絵
本を描いてあげてもいいですし、人形劇を一緒にしてみてもいいです。子供がシナ
リオを書いて、一緒にゲームを進めてください。ゲームをすることは子供にとって
、内側の世界を表現できる癒しの場となります。自分ではどうにもならないと思っ
ていたことに命を与えることで、「自分でどうにかできるのだ」と認識を変えるこ
とができます。親は子供の邪魔をしたり、批判したりせず、受け止めるだけです。
子供のお話に、ただ正確に従っていきます。すると子供は自分の感情が受け入れら
れ、大切にされているのだと実感することができるのです。話を聞いてもらって、
見てもらって、理解されている。それが子供を落ち着かせ、不安定な状況の中でも
自分は安全なのだと感じさせます。

少しでも楽に、辛い感情と向き合うことができるように

子供がネガティブな感情を抱いている時は、あなたも一緒にその感情と向き合う方
法を探ってあげてください。人間は、家族やパートナーなど大切な人とスキンシッ
プをとると、落ち着きと安心感を得ることができます。これは『幸せホルモン』『
絆ホルモン』などと呼ばれるオキシトシンホルモンが分泌されるからです。子供が
怖い夢を見たとき、あなたの布団に潜り込んで、抱きついてくるでしょう。しばら
く抱っこしているとまたスヤスヤ眠ってしまうのも、肌にふれ、体温を感じること
で安心するからです。また、大きな声で笑ったり、泣くこともホルモンの分泌を助
け、日々のストレス解消となります。オキシトシンは幸福感を高めたり、絆を深め
たりする心への効果と、ストレスをやわらげ、自律神経を整える体への効果の両方
が期待できます。そして、アクティブでいること。これはリラックスするための基
本です。子供が緊張感を感じていたら、走ったり、レスリングしたり、バランスボ
ールに座って跳ねたり、動物のまねをしたりして、不安を軽くしてあげてください
。子供が不安を感じている時には、一緒に簡単な瞑想やヨガをするのもいいですし
、家族でゲームをして対決するのも楽しいですね。その他にも、料理をしたり、音
楽を聞いたり、粘土や水や砂で遊んだりするのも、子供の感情を保つのに効果的で
す。親の言葉は、子供にとって毒にも薬にもなります。子供に何が起こっているの
か伝えるときは、言葉を慎重に選びましょう。子供が触れるニュースや、外から流
れてくる情報にも気を配って、必要に応じてチェックすることも、子供の不安をむ
やみに煽らないために大切です。
一般的に子供たちは大人に比べて、「一歩下がって見る」ということが苦手です。
そのため、ネガティブな情報に感情が揺さぶられ、不安定になりやすいのです。子
供達が落ち着いて生活するためには、自分が守られ、安全な空間にいるのだと実感
できなければなりません。これには私たち、親のサポートが必要不可欠です。例え
ば、手洗い・うがいのチェックシートを埋めたり、水やりなど年齢に合った家事を
担当させたりして、子供が自分で管理できる日課を作ってあげてください。自分の

力で何かを成し遂げることで、子供達は自分にコントロールする力があるのだと感
じることができるようになります。また、達成感の積み重ねは、心理的にもポジテ
ィブな影響を与えます。この時期が過ぎたらやりたいことや、挑戦したいことのリ
ストを子供たちに自由に作らせて、子供部屋の壁に掛けておくのもいいですね。

自分を守る

最後に、これはあなたへのメッセージです。家族が長い時間一つ屋根の下で過ごし
ていると、個人個人の境界線がぼやけて曖昧になっていきます。時に、自分の空間
やプライバシーがなくなって、怒りに繋がることもあります。あなたは親である以
前に、一人の人間です。イライラしたり、憂鬱な気持ちになるのは当然です。です
から誰も踏み入れることのできない、自分のためのスペースを作るようにしてくだ
さい。親として我が子を守るために、まずは自分を守る時間を決めるのです。湯船
に浸かっているときは自分だけの時間。寝る前の晩酌は自分だけの時間。自分一人
だと無理しすぎてしまうという方は、家族に相談してサポートしてもらう時間を決
めてもいいかもしれません。たとえどんなに毎日が大変でも、そこに戻ることで、
イライラを解消し、子供と一緒に過ごす時間をより意味のあるものにすることがで
きます。
「今まで通り」でないこの時期に、あなたが完璧に「今まで通り」に立ち振る舞う
必要はありません。頑張りすぎないでください。先の見えない不安や恐怖に耐える
こと。計画が崩れるのを許すこと。そして思い通りにいかずヤキモキしている自分
自身を受け入れること。これは全て、今の私たちにできることです。高く飛ぶため
には、思いきり低くしゃがむ必要があります。人間として成長するために、あるが
まま、失敗したり、退屈を感じたり、足を止めたりして、人生の流れに身を任せる
ということ。これが新たな挑戦となるはずです。大きく両手を広げて、心を開いて
、この挑戦に受けて立ちましょう。

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